県立図書館館館 のおすすめの本 (平成30年11月)
「ひと言でいうならベージュ色の町。」
そう自分の住む町を表すのは、12歳のディラン。オーストラリアのウェイルアップという小さな町に住んでいます。
ある日、紙飛行機を作って飛ばそうという授業を受けてから、彼の退屈な生活は一変しました。どれくらい長く飛ばせるかを競う大会を目指すことにしたのです!
物語途中からは、州大会を目指すディランの強力な助っ人となるクラスメイトのケビンや、のちに州大会や全国大会で競い合うジェイソン、日本大会の優勝者ミキとの出会いがあります。
ある時は壁にぶつかり、またある時はお父さんとの関係に悩みながらも、周りの人たちのアドバイスを受けて成長していきます。やがてベージュ色の毎日は、カラフルに変わっていくのです。
はたして、ディランの紙飛行機はどこまで飛んでいくのでしょうか。どうぞ最後のページまで読んでみてください。
FMラジオ放送のパーソナリティーをしている南条佐奈のもとにSOSのメールが届きます。いじめに悩む中学生の気持ちが痛いほど伝わってきます。南ちゃんのラジオで発信する言葉の数々が心に染み入ります。相手が必要としているときに自分のできることをする。友人からのいじめを我慢する事が友情ではない事、友人を増々追い込んではないかとの言葉にぐっときました。
小さな女の子が「だれかに悲しい思いをさせたらごめんなさいをちゃんと言わないといつまでも悲しい思いが消えないの」と言うくだりは、当たり前の事が出来てない事を教えてもらいました。主人公である海(うみ)の身の上に起こった出来事は、けっして人ごとではありません。身近な生活の中に起きている事です。この本を通して人の痛みをわかって欲しいと思います。そして何をするべきか何ができるかを考えて欲しいと思います。
あとがきにある著者の「きっときみに届く。そう、信じて…。」の言葉が心に響きます。
鳥獣戯画は、日本で最初の漫画と言われています。甲乙丙丁の四巻から成る絵巻物で、一番有名なのはウサギやカエルが描かれている甲巻でしょうか? 動物たちが人間のように相撲を取ったり、川遊びをしたり、田楽を踊ったりする様子はとても楽しげです。
これは平安時代に作られたもので、日本に残っている絵巻物で最も古いものの一つですが、何のために描かれたのか、誰が描いたのかなど、詳しいことがまだよくわかっていない不思議な絵巻物です。中に描かれているのは絵だけで、物語の文章がありません。どういう物語なのかを見る人が自由に想像できるのも、この絵巻物の魅力になっています。
本書は、そんな鳥獣戯画についての謎を徹底解明し、絵のおもしろみや見ることだけでなく、さらに楽しむ方法を教えてくれます。
鳥獣戯画を知っている人も知らない人も、ぜひ手に取って絵巻物の世界を楽しんでください。
「オレ、手伝う!」
6歳の昇兵は料理の手伝いをするのが大好きでした。家族がおいしいとほめてくれると嬉しくて、自分が作った料理でみんなを笑顔にしよう、そう心に誓ったのでした。
高校生になって居酒屋でアルバイトを始めると、昇兵が作ったまかないを食べた店長に「おまえやっぱり味付けのセンスいいな」と笑顔をみせてもらうことがありました。昇兵は料理人を志すようになります。
しかし、昇兵は「脊髄小脳変性症」というだんだん体が動かなくなってしまう難病におかされていたのです。体の自由が奪われ料理ができない……。一度は諦めた夢でしたが、それはやがて「火を使わない料理」のレシピ本を作るという新しい夢に変わりました。
そして、本当に本は完成したのです。販売され、多くの人の手に渡ったレシピはきっと笑顔を生んだことでしょう。諦めず投げ出さず夢を持ち続けることの大切さ。レシピ本にはそんな思いまでつまっているようです。